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家に鞄を置きに帰ることすら許されずに、隼人の家に引っ張り込まれて。
玄関に入った途端、玄関の扉に押さえつけられながら、とんでもなく深くて濃いキスに翻弄された。
「んっ、はやと……っ」
「なに」
「ここ、げんか、んっ」
「だったら何」
息継ぎの合間にどうにか漏らした抗議の声すら不機嫌に切って捨てる隼人は、噛みつくようなキスでオレの言葉を封じ込める。
見たことのない目をした隼人が、獣みたいに見えるから不思議で。
だけど触れてくる唇も扉に押さえつけてくる腕も──何もかもが、オレを強く強く求めてくれているんだと分かるから。
思いきって差し出した舌に、隼人は一瞬目を見張って。
だけどようやく、目を優しく細めてくれた。
名残を惜しむみたいにちゅっと音を立てて離れていった唇をぼんやり見つめて、そっと名前を呼んでみる。
「はやと」
「なに?」
さっきよりも柔らかくなった声にホッとしながら、緩んだ拘束の手を抜けてそっと隼人の背中に腕を回した。
「……咲哉?」
「ごめん、なさい」
「…………」
「ごめんなさい」
「……」
繰り返した言葉に、ふぅ、と隼人が大きな溜め息を吐いて。
呆れているのかと見上げた先に、笑っているとも怒っているとも──照れているともとれる複雑な表情をした隼人がいて。
「分かってる?」
「何を?」
「咲哉、めっちゃモテてるって」
「へ?」
「クラスの女子、大半咲哉のこと好きだよ?」
「んな訳……」
「しかも、柏木まで咲哉のこと好きだし」
「そ、れは……」
予想外の言葉にオロオロしていたら、切実な目をした隼人が、わしっとオレの頬を両手で挟んでおでこをくっつけてくる。
「オレ、恐いわ。いつか誰かに咲哉のこと獲られそうで」
「何言って」
「マジだよ。……マジで。ホントに、めちゃくちゃ恐い」
「はやと……」
おでこをくっつけたままぎゅっと目を閉じた隼人に、隙間がないくらいに強くきつく抱き締められた。
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