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「ホントはずっと、言うつもりなかったんだ」
「何を?」
「咲哉に、好きだって」
「ぇ……?」
「男同士だからって、戸惑ってたのはオレも同じなんだ」
「隼人……」
「言って嫌われたり、気持ち悪いとか思われたらどうしよって、ホントは恐かった」
初めて聞く隼人の弱音に驚いて隼人を見つめたのに、きつく閉じられたままの目はオレを見つめ返してはくれなくて。
オロオロしながら、隼人の背中に回していた腕に力を込める。
「でも。誰かに獲られるくらいなら、当たって砕けようかなって」
乾いた笑いを卑屈に漏らした隼人が、不意に目を開けた。
「ねぇ咲哉」
「なに?」
オレを見つめる目の、強さに喉が鳴る。
このあとに続く言葉が分かるような気がして胸が高鳴るのを必死で隠したのに、結局問い返した声は掠れて。
それに気付いたのか気付いてないのか。優しく笑った隼人が、するりとオレの頬を撫でる。
「咲哉の全部、オレにくれる?」
「ぁ……っ」
分かってたはずなのに、目も手のひらも声も優しすぎて顔が熱くなる。
「オレのだって……咲哉に、刻んで良い?」
真っ直ぐに見つめてくる、ひたむきな瞳。
頬に添えられたままの、少し冷たくて大きな手のひら。
隼人から流れ込んでくる全開の愛しさが、圧倒的な流れになってオレに押し寄せる。
フラフラするのはきっと、体温が急激に上がったせいだ。
喘ぐみたいに呼吸しながら、こくりと1つ頷くので精一杯。
なのに、それだけの返事で隼人は、満面の笑みをオレにくれるから。
愛しくて仕方なくて、込み上げた涙を堪える暇もなかった。
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