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まさしく、ぽろり、という表現が似合う涙が、咲哉の目から溢れて。
涙を拭おうとオロオロと伸ばしたオレの指を、咲哉の震える手が包み込んだ。
「さく」
「……て」
「ぇ?」
なんて? と聞こうとした声は、欲に鳴った喉のせいで続かなかった。
涙に濡れて潤んだ目でオレを真っ直ぐに見つめる咲哉を前に、欲を強く刺激されていた。
「隼人のに、して」
自分がこくりと飲んだ息の音が聞こえるほどの静寂の中にあってさえ、消えてしまいそうに小さな声で。
真っ赤になった顔を、潤んだ目を。
逸らすことなくオレに告げた咲哉を、言い様のない感情の嵐に飲まれながらも強く抱き締める。
「咲哉……っ」
言葉にならなくて、もどかしく首を振る。
喜びなのか、愛しさなのか。
それとも、本当に良いのだろうかという戸惑いなのか、恐怖なのか。
けれど1つだけ絶対に、言えることがあった。
「だいすき」
抱き締めた腕の中でピクリと震えた咲哉が、ふわりと笑う気配の後。
「おれも」
だいすきと、たどたどしく紡がれたら、もう我慢なんて出来なかった。
「だ、からっ、ここっ、げんかんっ」
抗議の声を塞ぐつもりで唇を貪って、猛る自身を押し付ける。
ぎくりと体を強張らせた咲哉もまた、期待と不安に体を震わせながら熱くなっていた。
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