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へたり、と隼人の唇が離れた瞬間に、床に崩れ落ちる。
ドクドクと鳴る心臓と、上がってしまった息。熱い顔を俯けて、震える手で濡れた唇に触れる。
こんなにもドキドキして息苦しいのに、もっと、なんて思って。
ゆらりと顔を上げたら、いつの間にか上半身裸になった隼人がそこにいて、驚くよりもまずその体に見とれてしまうんだから大概だと思う。
どくん、と胸が鳴るのと一緒に、体の芯が疼いて。
落ち着くための深呼吸のつもりで息を吐いたのに、みっともないくらいに息が震えた。
「咲哉」
呼ぶ声に背中を駆けたのは、いったい何だったんだろう。
「ぁっ……っ、はやとっ」
どうしようもないほどに、ハシタナク。
どうしようもないほどに、心から。
隼人、を。
ただひたすらに求めていた。
濡れた声で隼人を呼んだら、にっこりと嬉しそうに笑った隼人が、咲哉、と優しく呼んでくれて。
伸びてきた手のひらがそっと頬を撫でてくれる。
「んっ」
くすぐったさに首を竦めたら、窺う目で隼人を見つめて。
「はやと」
掠れた声で、媚びる。
「ホント、可愛いんだから」
ふ、と笑った隼人がオレの腋に手を入れて、ふにゃふにゃになったオレを立ち上がらせてくれて
「ベッド、行こう」
「はやと」
「床が良いの?」
からかう声に、緩慢に首を横に振った。
ふわふわする床の上を、ふわふわと足を動かして、ほとんど隼人にもたれるみたいにしてベッドまでの短い距離を移動する。
「キスだけでそんなになっちゃって……この後、どうなっちゃうんだろうね?」
「ゃっ」
ちがう、と否定するはずだったのに、隼人の唇に遮られてうやむやになる。
「んっ、ふ……ぁ、はや、と」
「ホント、……可愛すぎて困る」
咲哉のせいだよ、とからかう声が笑って。
とん、と軽く胸を押されたら、隼人の匂いしかしないベッドに倒れていた。
安心感と、正反対の興奮と。
ごちゃ混ぜになって胸に押し寄せてきて、混乱するしかない。
「咲哉」
優しい声と一緒に伸びてきた手のひらに頬を撫でられて、柔らかな唇がところ構わず降ってくるのを受け止めるだけで精一杯。
くすぐったさなのか、気持ち良さなのか。判別できない感覚に、目をぎゅっと閉じて首をすくませていたら
「咲哉」
「……?」
「目、開けて」
「……」
恐る恐る目を開けたら、真正面に隼人の顔のどアップ。
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