118人が本棚に入れています
本棚に追加
「はや」
「やっとこっち見た」
嬉しそうに呟いた隼人が、愛しそうに微笑んでくれる。
「はやと」
「うん」
「はやと?」
「うん」
満面の笑みで頷く隼人は、小さな子供みたいに無邪気でいとおしい。
ふ、と自分の頬が緩んで、すくんでいた首や肩から力が抜ける。
「咲哉」
「うん?」
「大丈夫だから、オレのこと信じて」
「はやと……」
「絶対。……絶対、傷つけたりしないから」
信じてと力強く笑う隼人に、頷いて見せてから。
「大丈夫。怖くなんかないよ。ただちょっと、くすぐったかっただけ」
「……くすぐったい、だけ?」
「ぇ?」
「くすぐったかっただけ?」
「ひゃっ」
妖しい眼差しがオレを捕らえたまま、隼人の手のひらがオレの頬を撫でて、首筋を指先でなぞられる。
変な声が出た口を慌てて手で覆ったら、困ったみたいな顔した隼人が、退けて、とオレの手を掴む。
「声。聞きたいから」
「んっ、でも」
「隠さないで」
「やっ、ぁ、だ、って」
「聞かせて。全部」
「はや、っ」
「全部──咲哉の、全部、見せて」
「はっ、やと」
妖しい目から、目をそらすことも出来ないまま。
隼人の手のひらや指先に、翻弄される。
首筋をなぞっていた指が耳を撫で上げて。
ぞわりと背中を走った何かの正体を見極めようとしてるオレを無視して、制服のカッターシャツのボタンがぷつりぷつりと外されていく。
「夏服、脱がせやすくていいよね」
「な、に……ッ」
にやりと笑った隼人の顔を余裕なく見上げる頃にはシャツは前が全開になっていて、アンダーシャツはあっという間に首の辺りまで目繰り上げられる。
「すごいね、このカッコ」
「な、に……?」
「すんげぇ、ヤラシイ」
「っ、隼人がっ! やったんじゃ、っ」
「ヤバい、もう、ホントに」
「っ、ンッ、は、ぁッ……!?」
何かにとりつかれたみたいにオレの胸に顔を埋めた隼人が、オレの中の何かのスイッチを入れた気がした。
*****
最初のコメントを投稿しよう!