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その日からは、毎日必死だった。
違う。絶対に、恋なんかじゃない。
あんなやつ、男だしノリは悪いし笑わないし。旭としか楽しそうな顔しないし。
そう、だから。見てしまうのは「なんでそうなんだよ」っていうイライラで。
弾む声と笑顔を盗み見てしまうのは、旭への嫉妬とか早川への想いなんかじゃない。
断じて違う。
自分にずっとそう言い聞かせてたら、ある日突然クラスメイトに言われた。
「柏木さー。早川のこと嫌いなのは分かるけどさー、睨みすぎな」
「っぇ?」
「なに、無自覚かよ。隼人がいなきゃお前絶対、早川のことイジメてたよな」
「そ、んな、こと……」
ない、と笑って誤魔化す声が、微妙に震えた気がした。
睨みすぎ? いつから? いつからオレは、早川を睨んでたんだろう。
愕然とした。
そんなことしてたら、いつまで経っても。
傍に行けな──。
「──ッ」
「どした、柏木」
「べ、つに」
胸を過った本音が。
無防備だったオレを抉る。
違う。違う。──違う。
オレは女子が好きだ。大好きだ。
うざがられようが邪険に扱われようが、女子の柔らかくて暖かくて全部包んでくれる曲線が好きなんだ。
オレは。
──あんな、早川、なんて。
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