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「ねぇ、みんなでお祭り行かない?」
はっとしたのは、女子のはしゃぐ声が聞こえたからで、訳の分からない思考に陥る前に呼び戻してくれたその声にホッとする。
あぁ、ほら。オレはちゃんと女子が好きじゃないか。
あんな風に、たかだかお祭りごときできゃっきゃ言えるなんて可愛いじゃないか。
ノリの悪いアイツとは、大違い。
そんな風に思いながら、複雑そうな溜め息を吐いてる早川をちらりと見たら。
「ホントに嫌だったら言えよ。ちゃんとフォローしとくから」
「行くよ。お祭りは好きだし」
「そっか」
「やめろよー、子供じゃないんだから」
「──やっと笑ったな」
旭にわしわしと頭を撫で回されて、早川が無防備に笑っていて。
(だ、っから……ッ)
いちいち、痛くなるな。
胸をぎゅっと掴む。
好きじゃない。好きじゃない。
羨ましくなんかない。
呪文みたいに唱えてるのに、意識も目もそらせない。
早川がオレの視線を捉えたことに気付いたら、呪縛が解けたみたいに視線が動いて、ホッとしながら目を閉じる。
これ以上何も見たくなくて目を閉じたのに、旭が睨み付けてくるのが分かって。
誰にともなく舌打ちした。
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