side-K

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 着付けの始まった教室の真ん中に、オレが狙ってた斉藤と早川と旭がいる。  ちらちら見てしまうのは、アイツらが気になるからじゃなくて、斉藤が気になるからだ。  何度こんな風に、無意味に自分を騙しただろう。  こっそり溜め息をつきながら、されるがままに浴衣に着替える途中。 「やーん。咲哉くん、浴衣ちょー可愛い」  一際黄色く高い声に、思わず目を向けてしまった先。  白い肌に良く映える濃い緑の浴衣に華奢な体を包んだ早川が、キョトンとした困り顔で立っていて。  喉が、鳴った。  衝動が、身体中を駆け巡っていた。  抗えない衝動に揺さぶられて、眩暈がするのに。  目が、離せなくて。  だから、見たくもなかったものを無理やり見せつけられた。 「これ、オレのだからあんま見ちゃダメ」  吐くかと思った。  旭が。早川を後ろから。  まるで壊れ物でも扱うみたいに優しく包むのを、見せつけられて。  冗談に紛らせたって、オレにはわかる。  ──旭は、オレに言ってる。  嫉妬がオレを包んで、ドス黒い何かが腹の中からこみ上げてきて。  その上、早川がまた。  楽しそうに笑うから。  泣くかと思った。  悔しくて痛くて。  帯がキツいなんて理由じゃ、説明できないくらいに苦しくて。  思いきり良く頭を振って、無理やり顔を逸らしたのに。  意識が、いつまで経ってもアイツらを追い続けて。  心が悲鳴をあげてる。 (勘弁してくれ)  苦々しく胸の内で吐き捨てて、着付けてくれた女子にもごもごと礼を告げたら、そそくさと教室の隅に移動する。  アイツらを視界に入れたくなくて無意味にスマホを弄りながら、時間が過ぎ去るのを待つしかなかった。
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