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男子全員の着付けが終わって女子に教室から放り出された後、どうせ時間がかかるであろう女子を待たずに先に会場へ向かうことになって。
目のやり場に、困ってしまった。
歩き慣れない下駄を履いて、浴衣でほてほて歩く早川は、女子が言うように小動物めいていて妙にそそられる。
ついつい目がいくたびに、旭が早川の隣に立つから。
嫉妬が。
腹の底を焼いていく。
燻り続ける火種に常に油と薪を足されて、会場に着く頃には消せない炎になってオレを焦がし続けていた。
(──もうやめてやる)
恋じゃないなんて、嘘だ。
抱きたい。
アイツを、思うままに汚したい。
なんだっていい。どうせ嫌われてる。
それなら。
徹底的に、嫌われたらいい。
柔らかくもなさそうな華奢な体を、思いきり抱いてめちゃくちゃにして。
お前なんか嫌いだと、早川から思いきり罵ってもらえたなら。
きっとこの、哀れで報われない恋を昇華出来るに違いない。
バクバクと、心臓がうるさいくらいに鳴っていて。
いっそ止まればいいのにと、思っていた。
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