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女子と合流したら、我先に女子連中に混ざった。そうした方が、自然だと思った。
そうして後ろの方にいる早川の気配を感じながら、そっと脇道に逸れていく。
早川に気取られないことよりも、旭の目を誤魔化すことの方が重要だ。
早川にめちゃくちゃするついでに、たかだか幼なじみってだけで自分のもんだと思い込んでる旭の鼻を、明かしてやらなきゃ気がすまない。
そうやってどんどん、自分が道を踏み外してることを自覚しながら。
止められなかった。
後戻りなんて、出来なかった。
もう、やめてやると決めたんだ。
そうでもしない限り、ずっと。
こんな救いのない恋を、苦しいままに続けることになる。
今からやろうとしていることに嫌な汗が滲んで、呼吸が荒くなっていく。
誰か止めてくれないかな、なんて。
一瞬心を過った弱音を。
不意に視界の端に捉えた濃い緑に、掻き消された。
(…………いた)
クラスメイト達から、随分離れて。
早川が、そこにいた。
人の波を避けずに、そのまま早川に突き進んでいく。
「おい」
掴んだ腕は、そこらの女子に似て随分華奢で、──また、喉が鳴る。
腕を捕まれて肩を揺らした早川が、オレの顔を見つけて眉をしかめて。
その顔にまた傷つけられる胸を、慰めてやる余裕もないまま。
「来いよっ!」
「ちょっ、どこ行く気だよ」
今までに聞いたこともないような怒りを孕んだ早川の声に。
ぞくぞくと、背中が粟立った。
今からやろうとすることへの罪悪感か、それとも泣き叫ぶ嬌声を連想したのかは、自分でも分からない。
このまま、誰も知らないこいつを暴いてやるんだと。
意気込んで腕を引く途中。
「咲哉」
アイツが、早川を呼ぶ声が聞こえた。
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