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遠藤は全組織の話が終わったところで特例措置として呼ばれている人物を招集する。その女性はドアを開けて会議室に入ってきた。
「はーい。辛気臭い部屋の中に一匹の子猫ちゃんが来たよ。」
日本人顔の女性は皆へウインクしてから遠藤の隣に立つ。誰もそのことに反応しなかったためか、女性は少し不満げにいた。
「さぁ、私を紹介しなさい。」
笠松は女性の後ろから説明を始める。
「彼女の名前は森久保佳子(もりくぼ かこ)さんです。この『狩人』と警察組織や国連との橋渡しとなる最重要人物です。」
森久保は遠藤の肩に手を置いて喋り出す。
「ということで、私に逆らった人間はこの組織から追い出すから。顔合わせとして呼ばれたけれど、皆、よろしくね。」
五十路の笑顔がユンサルを苛立たせる。だが何か不平を言われる前に森久保は会議室を出ていった。遠藤はため息をつき、弁明を図る。
「彼女に逆らったところでどうにかなる。問題はない。だが、逆らう理由もない。変わっている人だが、組織に協力してくれる人だ。あまりことを起こされない方がありがたい。では、何か他に伝達事項がある者はいるか?」
遠藤の脳裏に幾つか念話が入る。それを聞き終わった後、遠藤は再び口を開いた。
「それでは、定例会議を終了する。各自、仕事に励んでくれ。」
遠藤が席を立つ。それに伴って笠松と副本部長も動いて部屋を出ていった。各々が解散していく中、ジョン・ハルとマチルダ・フォン・シュトロイゲンだけは会議室に残る。そのほかの全員が会議室を後にした数分後、会議室に遠藤と副本部長がやってきた。
「少し待たせた。念話で相談事があると言っていたのは二人で合っているか?」
「俺はそう言った。」
「私もです。」
「よし、話を聞こう。」
ジョン・ハル41歳とマチルダ・フォン・シュトロイゲン23歳。双方とも支部の器となるにしては若すぎた。だが、二人を選んだのは遠藤であり、遠藤が信頼する人だ。ジョンの質問はマチルダと同じものだった。
ジョンは眉をしかめながら訝し気に質問した。
「日本人は皆狂っているのか?」
マチルダが大きく頷く。それとともに遠藤はため息をついた。
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