146人が本棚に入れています
本棚に追加
遠藤はジョンとマチルダを見ながら眉間を指で押さえた。
「すまない。日本人が何かしでかしたのか。」
「いやそうじゃない。狂ってるってのは良い意味だ。ただ性格に難がある。ミス・サクラバは確かに優秀で皆から信頼されている。しかし身勝手な行動が過ぎる。この前も俺の部屋に日本の漫画を持ちこんで一日中笑い転げてやがった。」
「レイカ・サキモトには多くの知識と技能をいただきました。しかし彼女はそれを彼女が建てた養護施設の孤児達にも教えています。まるで私的な軍隊でも作るかのように。あれは止めた方がよろしいのでしょうか。」
「…語弊があるかもしれないが、二人の下に所属している日本人は悪い人ではない。沙樹下冷夏に関して言えば、それが彼女の夢であり仕事だ。そのまま続けさせてあげてくれ。桜庭茉莉については漫画を即刻没収して燃やせ。」
ジョンは晴れた表情で敬礼してから部屋を出た。マチルダは遠藤に頭を下げた後、その隣に立っている副本部長の方を向いた。
「副本部長様からも講評をいただきたかったのでしたけれども、叶いませんか?」
「………。」
「それでは、引き続き任務を行ってくれ。以上だ。」
遠藤は副本部長と共に会議室を出て通路を歩く。副本部長は辺りを見回して周囲に遠藤しかいないことが分かるとその場で立ち止まった。
「あははははははははははははははははは!!」
副本部長の高笑いが通路に響く。遠藤はすぐさま彼を近くの部屋に押し込み、ため息をついた。
「ゲラを治してください。…しかし、よく今まで笑いをこらえられましたね。凄い顔になってましたよ。」
「くっ…昨夜に酷く面白い夢を見てしまい危なかった。恩に着る、ミスター・エンドウ。」
ひとしきり笑い終えた副本部長は茶髪をかき上げ、無精ひげを撫でながら部屋を出た。遠藤は日本人以外にも狂っている人がいると確信した。
(…じゃあ、家帰って始業式の準備するか。春休みももう終わりだ。)
遠藤は伊津野を見つけ、笠松と一緒に家へ瞬間移動させてもらった。
最初のコメントを投稿しよう!