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四月九日、始業式を終えた遠藤は笠松と桜と片桐、梓汰民と一緒に家に帰っていた。
片桐は終始笠松にべったりと張り付き、笠松が文系にいることに不満を零していた。笠松はそれを苦笑いで受け止めながら足を止める。
「そういえば、(『狩人』のことで頭がいっぱいだったけど、)皆は進路はどうするんだい?(狩人に)就職するのか、進学するのかい?」
桜は片桐のメンヘラぶりに少し引きながらも笠松の質問を考えた。
「そうね。私は大学に進学かな。少し考えている道があって。」
「へぇ、どこに進むの?」
「教育学部。」
桜の返答に遠藤がむせる。桜は眉をしかめ、笠松がさらに聞き返す。
「教育学部ってことは、先生になるってこと?」
「ええ、そうよ。私、小学校の先生になろうと思っててね。」
「…あ、あー、俺もそういえばそういう所目指してるんだよー。」
遠藤が棒読みで乗っかる。笠松はいかにして遠藤をフォローしていこうか考えていた。
「桜ちゃんはどの教科の専門に行くんだ?」
「私は国語かな。遠藤君は?」
「奇遇だな。俺も国語…は、無理だな。」
遠藤があっさりと乗っかることをやめたために笠松はもう何も考えなかった。
「じゃあ俺は社会科を目指すかな。桜ちゃんが小学校で、俺が中学校の先生。」
「それ、面白そうね。創君は?」
「僕はまだあんまり考えてないなぁ。大学には行こうと思ってるけどね。」
「なにそれ。片桐さんとつぐみちゃんは?」
「私ははーくんと同じところ!」
「私は実家の八百屋継ごうかなぁって…。大学まではさすがに学力が無いからね…。」
遠藤は自分が高校三年生になった自覚を今感じ始めていた。前世ではなしえなかった進路の相談。自分がこの先何をしたいのか、それはもう決まっていた。
「大雄は医学部、八田はラーメン屋を継ぐ。歩美さんは防衛大学に行ったし、皆夢があるんだな。俺も昔は教師になりたいとか恩師の前で言ってたよ…。」
「それじゃあ、遠藤君は将来何がしたいの?」
「俺はなぁ…。」
遠藤は横目で桜を見た。桜は既に笠松の方を向いている。
「俺は、大切にしたい人の傍に居続けたい。」
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