遠藤快、高校篇 -誕生ー

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12月25日。クリスマス模試に行った梓汰民と片桐以外の遠藤、笠松、神庭は梶本家にいた。梶本家の歩美の部屋に、ベッドで寝ている歩美と、その隣で容態を見守る梶本夫妻がいた。梶本は遠藤と笠松の到着を知ると廊下にいた遠藤拓真を連れて家の外に出た。神庭は不思議に思ったが、そのまま歩美に会いに行った。 梶本は三人を家の外に出し、ガレージで話を始める。 「遠藤、笠松。問題が起きた。」 「何となく分かりました。『四大起源』と同じ感じですね。」 「勘が鋭すぎて気持ち悪いな。その通りだ。歩美は意識朦朧中。恐らく四大起源の出生と方法は同じ。ここで問題が二つある。一つは大瀧の外出許可にもう少し時間がかかるらしい。もう一つは夫婦なんだが、俺と美咲ではダメだ。親族以外の夫婦が必要だが、結婚している奴が周りにいない。」 「一つ目の問題は由衣に頼みましょう。先に詠一さんをこっちに連れて来て、代わりに詠一さんに化けた由衣を支部にいさせましょう。その辺の手続きは誤魔化せます。二つ目の問題ですが、竹下さんの所はダメですか?」 「沢渡に連絡が取れねえ。何処ほっつき歩いてるか分からねえが、その夫婦はダメだ。」 「その夫婦の定義はどこにありますか?創の時みたいに指輪を送ったら夫婦と認められますか?」 「婚姻届や指輪など物的証拠があり、両者が夫婦であると認めた場合、夫婦とみなされる。」 「なら婚約指輪を見せてプロポーズして成功して相手がその指輪をはめている状況はどうでしょう?これは夫婦と言えますか?」 梶本は眉間を指で押さえて少し呻く。だが可能性はあった。 「遠藤は誰のことを言っているんだ?」 「『伊津野晃』と『比谷椋路』の二人です。伊津野さんが先週結婚のプロポーズして成功しました。その時に婚約指輪を渡しています。」 「その二人を今すぐ呼べるか。」 「はい。その二人を呼びつつ、調査組織に沢渡さんの調査を申請します。」 「それでいこう。頼んだ。」 ある英雄の出生は慌ただしく始まる。遠藤と笠松は歩美に会うことなく支部に戻った。
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