146人が本棚に入れています
本棚に追加
遠藤と笠松は日本支部に行き、大瀧の替え玉を作成する。藤原由衣は何のためらいもなく賛同し、神谷雄一郎の助力もあってわずか五分で大瀧詠一の引き渡しが終了した。
藤原の細胞で顔を変えている大瀧は隣で神谷が歩いていることに苛立ちながらも遠藤を見る。
「遠藤、話は古谷さんから聞いてる。けどなんで神谷がいるんだよ。」
「由衣の代替を見過ごす代わりに大瀧雁真君の誕生に付き添いたいとのことです。勿論、歩美さんに会わせたりなどはしません。外で俺と創と一緒に待機してもらいます。」
「ちっ、気に食わねえ。俺と歩美はまだこいつがここの支部長ってことに納得してねえからな。」
神谷は何も言わずにそのまま歩き続ける。すると、遠藤達の前に伊津野晃と比谷椋路が現れた。伊津野は遠藤を見つけるとその肩に手を置いた。
「あ、いたいた。椋路を呼んできたよ。瞬間移動するから遠藤君に触れて。」
全員が遠藤か伊津野に触れた所で場所が梶本宅の玄関に代わっていた。玄関先で待っていた拓真が大瀧と伊津野夫妻を連れて家の中へ入っていく。遠藤と笠松と神谷は外で待機していた。
「神谷さんは見張りをお願いします。桜桔梗が何かしてくる可能性も考えられますので。」
「もちろんだ。そのために来た。」
「快、笠松。」
家の中から神庭が二人を呼ぶ。神庭は家の中を指さし、中に入っていったために二人も続いて家の中に入っていった。
梶本家の廊下の中腹で立ち止まった神庭は遠藤と笠松へ振り向く。
「神谷は中に入れないように頼む。結構梶本が怒ってたぞ。それと、二人はこの出産方法を手伝ったことがあるみたいだな。拓真から、手伝えとの達しが来た。」
遠藤は奥の部屋を見る。慌ただしく足音が聞こえ、大瀧と歩美が拓真にレクチャーを受けている様子が想像できる。
「分かった。入浴と着替えは向こうでしてくれるはずだ。俺と創は生まれた後の支度を始める。産湯とタオルの用意だ。」
「頼む。俺は家の中で何か起きないか見張っておく。お前らも何かと気を張り詰めてるんだろ。少しくらい俺にも負担させろ。」
「ああ。今それ言おうとした。」
遠藤は笑い、拓真に呼ばれたため駆け足で奥の部屋に走っていった。
その様子を笠松と神庭が笑って見送った。
最初のコメントを投稿しよう!