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「君は死というものについて、どう思う」  オブツ先輩が唐突にたずねてきたのは、学生食堂でのことだった。私は素うどんをすすりながら、先輩をまじまじとみた。目下のところ先輩の質問にこたえる気はなく、私の関心は先輩の頼んだフルーツパフェにあった。  正確には先輩のパフェに乗っかっているブルーベリーのような果実だ。それの正体はブルーベリーなどではなく、猛毒のベラドンナの実である。あらかじめ準備しておいたものを、先輩の目を盗んでこっそりとパフェに乗せた。  記念すべき100回目の殺害計画である。 「死とは恐ろしいものだ。死は絶えず生き物のすぐそばにいて、誰にでも平等におとずれる」  とても、恐ろしいものだ。と先輩はひとりごとのようにつぶやいた。依然として黒光りした果物に手をのばす様子はない。もしもそれを口にしたら、先輩は死ぬ。一番死のまじかにいる人間が死を語るというのは少し滑稽な状況だ。 「死後の世界や生まれ変わりというものがあるかどうかなど、結局のところ誰にもわからない。一度経験したものは、もう戻ってこないからな。だから、死んだら無になるとも、本当はいえない。わからないから」
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