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「話の意図がみえてきません。何が言いたいんですか。もしくは死にたいんですか」
だったら、まずは目の前の果実を口にすればいいのに、と言ったらすべてが台無しになるので言わなかった。
「君はどんな死を望む」
先輩はいつになく真剣な様子だった。
先輩の死ならなんども想像し、むしろ創造してきた。しかし、自分の死は考えたことがない。
ちなみに一番理想的な先輩の死は、某漫画のように私の腕のなかで先輩が息絶え、死ぬ直前に私の満面の笑みをみて気付く。「やはり私は間違ってなかった、が……ま……」とか言うのを聞くのが理想である。
「死は喪失感だと、僕は思う」
自身の喪失。そして、周囲の人が失うもの。関係性だったり、時間の共有だったり、そういったものがすべて死を境目に失われて、徐々に消えていく。それこそが死の正体だと先輩は語る。
「ならば、その喪失感がもっとも少ない死というものが、僕は理想ではないかと考える」
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