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私の身体は硬直して動けなくなった。とても意外な言葉だった。まさに不意打ちである。
固まった私をよそに先輩は話をつづけたが、まるで耳に入らなかった。言葉が頭のうえを通りすぎていくような、自分の周波数がずれて受信できなくなってしまったような、不思議な感覚だった。
ようやくキャッチした言葉に、私はとうとう、正気ではなくなってしまった。
「僕は君になら、殺されてもいいと思う」
音がしたような気がする。タガが外れたような、スイッチがおされたような、カチッという音。
だったら……。
心臓がはやい。自分の体温があがっていくのがわかる。もしも私がロボットかなにかだとしたら、きっとモーターの回転数があがりすぎてオーバーヒートをおこしている。
「だったら…………。わた……しが……こ…………」
出かかった言葉をさえぎるように勢いよく立ち上がり、その場を離れた。顔が熱をもって、発火してしまいそうだった。私は逃げたのだ。
だったら、私が先輩を殺してあげますよ。
その言葉をいうことができなかった。まるでそれは、愛の告白でもするかのような、そんな感覚が自分にはあった。
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