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 校舎の5号館、8階の窓から下を眺めた。    キャンパスライフを存分に謳歌している頭の悪そうな学生たちが何人かいて、おそらく嫌いな教授の話や、バイト先での出来事などを意味もなく話しているのだろう。  その中にひとり、どんよりとした幸薄そうな、負のオーラをまとった残念なやつが歩いている。  私はその、孤独で孤立していて、決して孤高ではない彼の頭上に透明な死をぶらさげた。  天然水と書かれた500ミリリットルのペットボトル。校内のいたるところにある自動販売機の上の段に間違いなく置いてあり、誰でも購入することが可能だ。凶器としては最適である。  昨日の夜、読書の合間にした計算によれば、500グラムのペットボトルは地上8階から2秒~3秒の自由落下の後、約300キログラムの衝撃をうむ。あたり所が悪ければ、死ぬ。  例えば、頭とか、頭とか、頭とかにあたれば、死ぬ。  彼の頭上にちょうどよくあたるように、彼の頭がペットボトルによって陥没するように、タイミングを見計らって手を離した。 「先輩よ。比較的やすらかに、死ね」
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