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 私がオブツ先輩を殺そう考えたのは去年の夏、正確な日付はおぼえていないが、確か金曜日だった。  特に明確な理由があったわけではない。まして、常々恨みを抱いていたわけでも、急速に殺意が芽生えたという類いのものでもない。  あえて理由をあげるならば、生ごみだろう。  部屋の片隅に置かれていた生ごみの袋が異臭をはなち、夏のあたたかな空気と混ざって私の鼻にふわりと舞いこんできた。私の地域ではもえるごみは火曜日と金曜日と決められており、火曜日に出し忘れた生ごみが苦情をにおいという手段で伝えていたのだ。  生ごみを捨てるときだった。ふと、ごみはごみとして処分しなければならないと気付いたのは。    天からの声が聞こえていたかもしれない。しかし、そんなことをいうと危ない薬でも使用しているのではないかと疑惑がおこるので、やはり、気付いた、あるいはひらめいたとしておこう。  そこで私は驚異的で、天才的で、悪魔的な3段論法が瞬時につながった。  ごみは処分しなければならない。オブツ先輩はごみのような人間である。オブツ先輩は処分しなければならない。完璧なロジックだった。
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