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 校内のカフェテラスで、熱々のコーヒーを飲みながらノートにペンを滑らせた。    開かれているページにはおとといの晩に考えた自由落下についての計算式がつらつらと書かれており、下のほうは空白だった。その空白に結果と考察をうめる。    ペットボトル殺害。結果、失敗。考察、空気抵抗による落下位置や歩速と秒数のタイミングに問題なし。先輩の予想外の行動による失敗。改善の余地、なし。    計画と失敗をつづったノートはすでに5冊目に突入にしており、回数を数えてみると、なんと驚くべきことに99回に達していた。    書きながら考える。いつもそうだ。先輩は紙一重で私の殺害計画をかわす。なんてラッキーなやつなのだ。    しかし、そのラッキーは普段からもっているものではない。むしろ、これほど不幸が舞い降りる人間も少ないくらいだ。  そこにバナナの皮が落ちていれば、間違いなく踏む。犬のふんも同様に、踏む。楽しいことやイベントの時はまず雨がふる。そして中止の連絡は先輩にだけこない。靴紐は週一できれる。黒猫は毎朝といっていいほど先輩の前をよこぎる。  ありとあらゆる不運をよびよせるくせに、なぜか死なないのである。  不運を利用して、バナナの皮を準備し、転んで頭をぶつける位置に剣山を置いてみたが、同じバナナの皮で2度転ぶという荒業で回避した。
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