3.なりゆきの初デート

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長めの前髪に、短い襟足。 隣に並ぶと身長は、つばさの思っていたよりも高くて、180はありそうだった。 顔はよく見ると、カッコいいというより可愛い系。 たまに見せる目つきの悪さが、逆に彼をシュっとしたいい男に見せる。 (うわあ… 何、この展開…) 今日、時間があるかと聞かれ、つばさが頷くと、片倉はすぐに行先を決め、電車内でつばさの手を取った。 (こんな、いきなり手をつなぐとか…あり得ないんだけど…) 握られた直後から、つばさの手が汗ばむ。 「片倉くん」 「うん?」 「この手、何なの?」 「ああ、付き合うんなら、フツーでしょ」 当たり前のようにそう言い、彼は優しい笑顔をつばさに向けた。 「私、付き合うとか、言ったっけ…?」 「OKしてくれたんじゃないの?」 「してないよ…!」 手を振りほどこうとして、つばさは力を入れる。 「してなかったっけ…?」 つばさの力に応えるように、片倉はギュっと握り返した。 それにドキドキして、つばさの目が泳いでしまう。 「えぇ…してなかった、と、思う、けど…」 (やだ、私、片倉のペースじゃん!) 少し離れたところにいる女子大生風が、つばさと片倉のやりとりを見てニヤニヤしていた。 つばさは電車のドアにもたれ、片倉の手を離す事を諦める。 「色々、聞きたい事があるんだけど」 「うん。オレも」 片倉は真っ直ぐつばさを見てくる。 その態度が余裕たっぷりで、やっぱりつばさにとって、彼の印象はあまり良くない。 (普通の女子だったら、ときめいているよね…) つばさが今感じているドキドキは、それが片倉だからというわけではない。 ただひたすらに男子に不慣れで、至近距離に男がいるという事実がつばさを怯ませる。 負けないように、つばさも片倉を見上げた。
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