491人が本棚に入れています
本棚に追加
長めの前髪に、短い襟足。
隣に並ぶと身長は、つばさの思っていたよりも高くて、180はありそうだった。
顔はよく見ると、カッコいいというより可愛い系。
たまに見せる目つきの悪さが、逆に彼をシュっとしたいい男に見せる。
(うわあ… 何、この展開…)
今日、時間があるかと聞かれ、つばさが頷くと、片倉はすぐに行先を決め、電車内でつばさの手を取った。
(こんな、いきなり手をつなぐとか…あり得ないんだけど…)
握られた直後から、つばさの手が汗ばむ。
「片倉くん」
「うん?」
「この手、何なの?」
「ああ、付き合うんなら、フツーでしょ」
当たり前のようにそう言い、彼は優しい笑顔をつばさに向けた。
「私、付き合うとか、言ったっけ…?」
「OKしてくれたんじゃないの?」
「してないよ…!」
手を振りほどこうとして、つばさは力を入れる。
「してなかったっけ…?」
つばさの力に応えるように、片倉はギュっと握り返した。
それにドキドキして、つばさの目が泳いでしまう。
「えぇ…してなかった、と、思う、けど…」
(やだ、私、片倉のペースじゃん!)
少し離れたところにいる女子大生風が、つばさと片倉のやりとりを見てニヤニヤしていた。
つばさは電車のドアにもたれ、片倉の手を離す事を諦める。
「色々、聞きたい事があるんだけど」
「うん。オレも」
片倉は真っ直ぐつばさを見てくる。
その態度が余裕たっぷりで、やっぱりつばさにとって、彼の印象はあまり良くない。
(普通の女子だったら、ときめいているよね…)
つばさが今感じているドキドキは、それが片倉だからというわけではない。
ただひたすらに男子に不慣れで、至近距離に男がいるという事実がつばさを怯ませる。
負けないように、つばさも片倉を見上げた。
最初のコメントを投稿しよう!