3.なりゆきの初デート

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「あ、あのさ!」 ガムシロとミルクを1個ずつ入れて蓋を戻すと、つばさはやっと言った。 「友達から、っていうのはどう?」 片倉の事を全然知らないし、そのくらいから始めるのがベストなんじゃないかと思った。 しかしつばさの思惑に対し、片倉はバッサリ言い放った。 「やだね。ダメだよ、『彼女』じゃないと」 「………は?」 つばさは一瞬固まってしまう。 片倉は今日一番の優しい顔で、そしてそれ以上に優しい声で言った。 「ちゃんと、オレの彼女として、付き合って」 「………」 片倉の言い方があまりに素敵過ぎて、つばさはクラクラする。 (すごい、凄すぎるよ、イケメンパワー…) 数秒間、ついポーっとしてしまった。 (ハッ、いかんいかん) つばさはアイスコーヒーをひと口飲む。 ゴクリと喉が鳴った。 「私、誰かと付き合った事がないから分からないんだけど、…こんな、なんか簡単に付き合っちゃうものなの?って言うか、いつも片倉ってこんな感じで女の子と簡単に付き合っちゃうの?」 「いや、こんな感じで付き合うのは初めてだよ」 落ち着いた声で、ニコっと片倉は笑う。 (よ、余裕過ぎ…) 自分の置かれている状況に、つばさは改めて気づき、焦る。 どう対応していいか分からなくて、ついキョロキョロしてしまう。 テラス席は歩道から一段上がっていて、歩行者と視線は合わない。 「オレ、誰かに『付き合って』って言ったの初めて」 「え、そ、そ、そうなの?」 片倉はモテるから、常に相手から告白されて付き合うというのは分かる。でもつばさが分からないのは、そんな彼が自分から『付き合って』と言った相手がよりによって自分だという事だ。
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