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「あ、あのさ!」
ガムシロとミルクを1個ずつ入れて蓋を戻すと、つばさはやっと言った。
「友達から、っていうのはどう?」
片倉の事を全然知らないし、そのくらいから始めるのがベストなんじゃないかと思った。
しかしつばさの思惑に対し、片倉はバッサリ言い放った。
「やだね。ダメだよ、『彼女』じゃないと」
「………は?」
つばさは一瞬固まってしまう。
片倉は今日一番の優しい顔で、そしてそれ以上に優しい声で言った。
「ちゃんと、オレの彼女として、付き合って」
「………」
片倉の言い方があまりに素敵過ぎて、つばさはクラクラする。
(すごい、凄すぎるよ、イケメンパワー…)
数秒間、ついポーっとしてしまった。
(ハッ、いかんいかん)
つばさはアイスコーヒーをひと口飲む。
ゴクリと喉が鳴った。
「私、誰かと付き合った事がないから分からないんだけど、…こんな、なんか簡単に付き合っちゃうものなの?って言うか、いつも片倉ってこんな感じで女の子と簡単に付き合っちゃうの?」
「いや、こんな感じで付き合うのは初めてだよ」
落ち着いた声で、ニコっと片倉は笑う。
(よ、余裕過ぎ…)
自分の置かれている状況に、つばさは改めて気づき、焦る。
どう対応していいか分からなくて、ついキョロキョロしてしまう。
テラス席は歩道から一段上がっていて、歩行者と視線は合わない。
「オレ、誰かに『付き合って』って言ったの初めて」
「え、そ、そ、そうなの?」
片倉はモテるから、常に相手から告白されて付き合うというのは分かる。でもつばさが分からないのは、そんな彼が自分から『付き合って』と言った相手がよりによって自分だという事だ。
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