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「ちょっと片倉!簡単に…触るの禁止!」
「なんで、彼女なのに」
「気持ちはまだ、全然『彼女』じゃないし!」
(うわ~ん、コワイよ、片倉…)
思わずつばさは片倉を睨んだ。
「じゃあ、ちょっとずつ慣れような。とりあえず、オレの事苗字じゃなくって、名前で読んでよ、冬唯(とうい)って。オレも梅田の事、つばさって呼ぶから」
「うぅ………」
「そのぐらいからなら、いいだろ?」
「わ、…分かった…」
何だか片倉のペースにはまって、丸め込まれている気がした。
完全に暗くなる前に、片倉はつばさを家まで送って行った。
帰り道、つばさは当たり前のように再び彼に手を取られる。
こんな風に家まで送ってもらった事も、つばさにとっては初めての経験だった。
男子と2人で手を繋いで帰る事も、2人でお茶した事も、…今日、片倉と経験した全ての出来事が、つばさにとって初めてだった。
(なんか、すごい強引なんだけど…)
不思議と嫌じゃなかった。
その日、遅い時間に携帯が鳴った。
彼に言われるまま登録した、『冬唯』の文字が画面に映し出されるのを、不思議な気持ちでつばさは見つめた。
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