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片倉冬唯と付き合ってから、つばさの日々は一変した。
冬唯と付き合う事は、女子の間で猛烈な勢いで拡散されて、それまで大して認知されていなかった「梅田つばさ」の名は一躍有名になってしまった。
学校にトレンドワードがあったら、確実につばさと冬唯の名前が入っていただろう。
人気者と付き合う事で、女子たちからやっかまれるんじゃないかと、つばさはそれが心配だった。
しかし実際には、つばさへの女子たちの嫌がらせは皆無だった。
ゴールデンウィークが明け、それまで1年の時に仲が良かったグループと昼休みを過ごしていたつばさは、今日子と涼香と一緒に自分の教室で昼食をとる事にした。
「なんか、片倉って」
情報の早い涼香が言う。
「女子と付き合っても、3カ月ぐらいしか持たないらしいね」
「え~、そうなんだ」
女子たちのつばさを見る目が羨む感じ半分、同情するような感じがあとの半分だった事に納得がいく。
「軽そうだもん、冬唯くん」
冬唯から付き合ってと言われて、流されるように交際を始めて今日で4日目。
誘われるままに、毎日一緒に帰っている。
冬唯はいつもつばさの手を握っていたし、常につばさをリードしていた。
男子に免疫のないつばさでも、彼が女子に慣れている事はさすがに分かった。
「私との付き合いも、あっという間に終わっちゃうんじゃないかなあ」
プスっと音を立てて、つばさは紙パックのジュースにストローを刺した。
「…どうなの?実際一緒にいてみて、片倉って」
「う~ん…。カルイ。チャラいって言うより、カルイ。優しいんだけど…、何かすごい慣れてる」
「ああ~、慣れてそうだよね~、なんか」
「でもつばさ、男子と付き合いたいって言ってたじゃん。もう、誰でもいいって感じで」
今日子が意地悪に突っ込んでくる。
「確かに口では言ってたけどさ…、実際に本当に付き合うとなると、もっと覚悟とか準備とか要るような気がしてたのに…。
『誰でもいいから付き合ってみたい』なんて、ホントに口だけだったのにな…」
思わずつばさからポロリと本音が出る。
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