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「………」
突然の事で、つばさは固まってしまう。
指にキスした冬唯の顔を、ただじっと見ていた。
冬唯はそんなつばさの視線に気づき、顔を上げる。
「どした?」
「冬唯くんって…」
「うん?」
「なんか、スゴイね!」
つばさは冬唯に対して、まるで珍しい物を見た時のように気持ちが昂っていた。
「え?スゴイ?」
予想に反したつばさの反応に、冬唯は戸惑う。
「イケメンって、ホントにこんな漫画みたいな事できるんだ~!」
唇では無かったが初めてキスされた事実より、目の前で起きたドラマのようなワンシーンに、つばさは興奮してしまう。
「な…、そんな風に冷静に言われると…」
冬唯は口ごもる。
恥ずかしがるとか、もっと女子らしい反応があると思っていたのに、素でそう言われてしまうと、バツが悪い。
(あれ、冬唯くん、照れてる…?)
自分からしておいて困ったような顔をしている冬唯を見て、つばさはちょっとドキっとした。
(あれあれ?何か可愛いんですけど…)
いつも余裕たっぷりの彼の意外な様子に、嬉しくなってくる。
(意外に、普通の男の子なのかも…)
そう思うと何だかホっとして、つばさはつい笑顔になっていた。
(何だよ…オレが恥ずかしいじゃん)
冬唯はつばさの手を離す。
屈託なく笑うつばさに、冬唯も釣られて和んでいた。
店を出て、そのまま塾へ行く冬唯と一緒に、つばさは駅まで行く。
「今日は送れないけど」
改札から少し離れたところで立ち止まり、冬唯はポケットからカードケースを出した。
「ううん、気を遣ってくれてありがと。冬唯くんも勉強頑張ってね。」
「オレ明日は都合悪いんだけど、日曜日は空いてる?」
「うん」
つばさは頷く。
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