1.聞かれちゃった本音

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「うーん、別につばさがどっか欠落してるとは思わないけど、ちょっと男子を男として意識しなさすぎなのかもね~」 「だってクラスの男なんて、友達って感じで。今日子みたいに年上の男の人だったら、また違うのかなあ…」 そんなつばさを見て、今日子は少し考えて答えた。 「じゃあさ、うちのクラスに1人イケメンいるじゃん、片倉って奴」 「どんな子だっけ~…?」 4月にクラスが変わったところなので、つばさはまだクラスの全員を覚えていなかった。昼休みには、今日子と共に1年の時に仲が良かった友人と一緒にクラスの外でランチしていた。そのせいもあり、つばさは名前を聞いても顔と名前が一致しないのだった。 「え~!覚えてないの!クラス替え直後に女子がめっちゃザワついてたじゃん!」 「そうだっけ~?…ああ、あのキラキラした子か」 確か顔のキレイな男子がいた気がする。 美形に興味が無くて、彼のイメージを思い出してもまだ漠然としていた。 前に座っている男子が、チラっと振り返った。 マスクと重装備な眼鏡をしていて、ひと目で花粉症だと分かる。 うるさくしてしまったのかと思い、つばさと今日子は小声になる。 「片倉くんとか超カッコいいし、さすがのつばさでも意識するんじゃない?」 「え~、あのキラキラ?あんなキラッキラなの、別世界過ぎて無理無理!」 「そうかな~、目の保養になるじゃん。せっかく同じクラスなんだから、どうせなら片想いでもいいじゃん。あんなイケメンそうそういないよ」 「え~、ヤダよ。ああいうキラキラな子って面倒くさそうじゃん。女子を敵に回しそうだし、何の修行?って感じ。私はもっと普通に爽やかな子がいいなあ~」 勘弁してという顔で、つばさは肘をつく。 「じゃあ具体的にどんなタイプがいいのよ」 「そうだなあ…強いて言えば~…」 そのまま、つばさの好みの話と今日子の好みの話がゴチャゴチャになって、盛り上がっているうちに教師が教室へ入って来る。 そこで自然と会話は途切れた。 つばさの前の席に座っていた男子が、花粉症用の眼鏡を外し、ケースの中の普通の眼鏡と交換して、かけなおす。 (つばさ、って誰だよ…。オレも知らないっての…) そしてテキストに書かれた『片倉』という名前を、そっと左手で隠した。
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