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廊下を歩くだけで、女子が片倉を見ている。
そんな女子たちの視線に、つばさは気後れしてしまう。
トイレの手前の小さく曲がったスペースで、片倉は立ち止まった。
つばさは一体何の話なのかと、ちょっとドキドキしてくる。
片倉はつばさの方へ真っ直ぐ向くと、言った。
「あのさ、昨日予備校来てたでしょ」
「ん?」
(行ってたけど…何だろう)
予備校へは確かに行っていた。つばさは素直に頷く。
「うん。今日子と一緒に行ってた。もしかして、片倉くんもいたの?」
「いたよ、ただオレ、薬切らしてて、酷い花粉症でさ」
「花粉症……」
確か、つばさの前の席の男子が酷い花粉症っぽかった。
そこで初めてピンとくる。
「もしかして、私ってあんたの席の後ろにいた?」
「……」
『あんた』という言葉に片倉の眉がピクンと動き、一瞬不機嫌な気配を見せたがそれもすぐに消える。
彼は黙って頷いて、そして言った。
「梅田さん、めちゃデカイ声でしゃべってたじゃん」
「あ~…、ああ…ごめん」
そこでつばさはハっとする。
片倉の噂話をしていた事を思い出した。
「えっと…、き、聞こえてたよね…片倉くんの話してたの…」
「もちろん、バッチリ」
ニッコリしている彼の目が全然笑っていない理由を、つばさは悟る。
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