ぜんぶ夏のせい

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白紙のノートとボールペンを手に、杏里(アンリ)がおれににじりよった。 「ねえ、尊(タケル)はどんな女の子がタイプなの?」 彼女が瞬きするたびに、マツエクでバサバサに増えたまつげが動く。 その奥の瞳は複雑な模様のブラウン。お前純日本人のくせに、というつっこみはもうだいぶ前に言った。 茶の間の隅の扇風機がこちらを向くたびに、杏里のピンクがかったブラウンの髪がふわふわなびいた。 「……黒髪清楚ナチュラルメイク。大人しくて図書委員とか眼鏡とか似合いそうな子。ていうか二次元」 杏里は「クロカミセイソね~」とつぶやきながら、ノートにメモしていた。 「二次元無視すんなギャル。あと黒髪清楚くらい漢字で書けよ、アホ」 「うるしゃーい、読めればいいの!」 杏里はボールペンの上についてるピンクの羽で、おれの顔をくすぐってきた。 「やめろ、暑苦しい。つーかもう勉強しないなら自分の家に帰れよ」
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