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「やだ! 勉強するから帰らない! でもプール行きたい、海行きたい、花火見たい!」
「矛盾してるぞ」
杏里がちゃぶ台に突っ伏したまま、下からおれをじっと見上げた。
「尊、夏祭り連れてって……」
「ハイハイ、大学第一志望合格したらな」
そう答えてまた勉強に戻ろうとすると、隣のキッチンからスイカを切って持ってきた母さんが口を挟んだ。
「冷たい先生ね~。7つも年離れてるんだから、もっと優しくしてあげなさいよ。それに杏里ちゃんが受験終わる頃には尊、とっくに関東からいなくなってるくせに。杏里ちゃんスイカ食べる?」
「……食べる……」
ふてくされた顔でスイカにかぶりつく杏里はまるで子供の頃のままだ。
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