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母さんは杏里が机の上に落とした種を拾ってやりながら口を尖らせた。
「あんた今無職だしどうせ部屋でアニメばっか見てるんだから意地悪しないで夏祭りくらい連れてってあげなさいよ~」
「無職じゃなくて転職期間中! 秋から就職決まってるし」
勤めていた商社が経営破綻した。慌てて就活してどうにか決めた再就職先の条件は……九州支社勤務。
「こっちで探せばいいのに。母さんと杏里ちゃん置いてなんで九州行っちゃうのよ」
「そーだそーだ! わたしの家の近くのコンビニ、求人募集してたよ! 履歴書送っといてあげようか?」
母さんが「それいいわね~いつでも会えるわね」と悪のりする。おれは杏里の額をでこぴんした。
「おれの事よりお前は自分の将来を心配しろ。スイカ食べたらまた英語やるぞ、受験生」
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