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「ちゃんと受験対策の塾行けよ。杏里の家、別に金無いわけじゃないだろ」
おれの言葉に、杏里は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「やだ! 楽しくないもん。わたし尊じゃないとやだ!」
「おれと勉強したって別に楽しくないだろ。楽しませる気もない」
しかしおれが勉強を見始めて、杏里の実力は急に伸びた。杏里の母さんには大喜びでお礼を言われたけど……おれは変わったことはなにもしていない。
杏里はただ勉強してこなかっただけで、やればできるタイプだった。ちゃんと塾に行けばもっと伸びるはずだ。
「楽しいもん……」
杏里は頬を膨らませて、問題集を開いた。おれはそれをただ正面で見ているだけだ。時折わからないところがあれば教えてやるけど、それ以外はずっと見てるだけ。
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