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杏里が、ぶん、と勢いよく顔を上げた。心なしか目がキラキラしているのはカラーコンタクトのせいだろうか。
「なんで? どうしたの? わたしがいつも寄り道しようとしても、尊はダメって言うのに」
「いや……まあでも元気ならいいや。まっすぐ帰るか」
公園をそのまま通りすぎようとしたおれの腕を杏里が掴んだ。杏里が声をあげる。
「はあああ。なにそれ! 誘ったじゃん! だめだめ! 寄り道しようよ!」
「もう元気じゃないか。帰ろう」
「やだ! やだやだやだやだ!」
杏里はその場でじだんだを踏んだ。
(これだから三次元ギャルは……)
まあ杏里はこの夏毎日おれの家に来ていて、全然遊びに行っていないようだし……。受験生としては正しい姿だが、ストレスがたまって息抜きしたいのかもしれない。
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