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カイツェルくんと夏の日
遠くで入道雲がもくもくとその存在を主張し始める7月某日。
校舎の屋上であたしはひとり、弁当箱を握りしめる。
「…もう、夏なんてなくなればいいのにー!!!」
本気でむしゃくしゃしていた。反省はするつもりもない。
だって、人の気持ちを平気で踏みにじるようなことしてくれたんだもの。
ここで怒らなきゃ、人として大事な何かをわざとどっかに投げ捨ててきたってくらいのことだよ?
助走をつけて駆け上がっていくような暑さこの時期、日よけのない屋上でお昼を食べる人なんて誰もいない。
頭のてっぺんから足の先までじりじりと焼かれても、あたしはそんなこと気にならないほど怒ってたんだ。
「突然すみません、そんな物騒なことは言わないでほしいのですです」
不意に後ろで声がした。
怒りで目にたまった涙もそのままに振り返ると、なんか、ふわふわしたものが浮いてる。
「え…」
間違いなく、この世のもんじゃない…。
だって、まず浮いてるもの。それに真っ白な長いワンピースに、先っぽが星になってるステッキみたいなのを持ってる。決定的なのは、背中の羽根と頭についてる金色の輪っか。
これって、すでにDNAに刷り込まれてそうなほど典型的な…。
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