カイツェルくんと夏の日

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「では、ボクは行きます! また来年ですです! ちょっとだけお礼のサービスもつけておくですですよ」 「ありがと。来年、楽しみにしてるよ!」 「ボクもですです!」  ふわっと、そのままさらに高いところまで上がっていくカイツェルくんの体。  ちょっと名残惜しいけど、仕方ないよね。  こっちに手を振ったかと思うと、その場所でまぶしい光を放って徐々に周りを包み込んでく。 …。 ……。 ………。 「あれ…?」  握ってた手を開くと、すっかり溶けてしまった大根おろしとねぎ。  そして、もう片方の手にはオレンジ色の意味不明な紙切れ。  …あたし、今まで何してたっけ?  思い出そうとしても、記憶の一部を白色のクレヨンかなんかで塗りたくられたみたいに認識できなかった。  でも、気分は悪くない。  どちらかと言うと、いい。ちょっと高揚してる感じもある。  自分でも、わけわかんないけど。 「…ま、いっか!」  とりあえず、昼飯昼飯!  豚しゃぶをうどんの上に乗せて、おろしとねぎのラップをはがして上に盛る。たっぷりポン酢をかけて、最後にすだちをしぼって完成。  いっただっきまーす!  …ってそのとき、5時間目の授業開始をお知らせするベルが、むせかえるような暑さの屋上に響いた。
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