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魔術協会ベトリアスが運営するべトリアス大図書館はスペトア王国の中心に位置している。
一般公開こそ、されてはいないが外観だけでかなりの迫力がある。
石煉瓦で積み上げられた協会の様な建物で、中央には天高く時計塔が伸びている。
その圧倒的迫力は皆を驚かせ、スペトリア王国は観光地としても人気が高い。
そんな大図書館の中、壁には隙間が無いほど本が敷き詰められていて、高く伸びている塔の内側までもびっしりとだ。
そんな神聖なある種の神秘を感じてしまう建物の中に一人の男が椅子に座って本を読んでいた。
淡く光る麦色の髪を鎖骨程まで伸ばし、顔は少し童顔の美少年といった感じではある。
しかし、溢れ出るオーラは数千年は生きた老人のようであった
読んでいる本の題名は『竜に焼かれたマグリス』(エイブラムス・テンプリオ著)であり、有名な児童書だ。
「焼かれた、哀れマグリス、その腕はもう、剣を持つことすら叶わないであろう」
男は本を閉じて、深く深呼吸をする。
「そこにいるのだろう。現れよ。」
「あれ?バレちゃったかな?」
男の声に反応して、本棚の影から赤毛の少女がひょっこりと顔を出す。
それはとても子供らしくニコニコとした笑みを顔に貼り付け、軽くスキップをしながら男に近寄る。
「流れる空気を乱すのだ。
ハッキリとわかってしまうよ
リン、何かようでもあるのかな?」
リンと呼ばれた少女はハッと、何かを思い出したかのように顔を上げると男の腕を引っ張りあげる。
「大変!お母さんが呼んでるよ!!」
リンは母親の呼び出しを知らせに来たのであるが、途中目的を忘れて男を観察していたのだ。
リンは慌てながら、図書館内を駆け出す。
「お兄ちゃんも速く来てね!!」
扉の前でコチラに手を振ってから扉の奥へと消えてしまう。
「行くとするか」
椅子から立ち上がる際、心の中で「よっこらしょ」と言ってしまったことに一人苦笑いをしながら、本を棚に収納する。
すると、ある本が近くにあり、興味を惹かれる。
『魔女とサンテステン』(ルディアン・マーク著)
それを本棚から抜き取り、開いて少し読んでみるとなかなかに面白い。
内容はサンテステンという落ちこぼれの男が皆から恐れられている天才魔女に恋をしてしまうお話。
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