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中は明かりを付けていないため、外から入ってくる夕日の斜光が当たりを照らし、そのおかげで部屋の中の様子が分かる。
奥に進むと彼らの声が聞こえて来たので近づいていく。
すると扉に張り付いて聞き耳を立てている先程の彼女がいた。
彼女は黄坂に気付き、しーっ、と人差し指を唇に付けて静かにしてもらうようお願いする。
彼は承知したのかにっこり笑いドアノブに手をかけ、思いっきり開けた。
「きゃー!!」
扉に張り付いていた彼女は当たり前だが、そのまま部屋の中に飛び込むように倒れ込んだ。
「あ、来たのか紅」
「おおおおおおお!!!紗利菜殿ではないか!!!」
その紅を見る俺と絹織は争い合って所々が乱れていた。
…まあ一方的に絹織が先程の怒りを俺にぶつけて来ただけなのだが、今は両頬を引っ張られて地味に痛い。
そして紅に気付いた彼女はその引っ張っていた手を離し、バチンと音を立てる。
「いたっ」
「なんとここまで参られたのか!!そこまでしてワイに会いに来てくれたのでござるか!!?」
「どうしてそうなるのですの!!?」
うつ伏せに倒れ込んだ姿勢のまま絹織にツッコむ彼女。
「それよりも!!説明してくださる!?和白!!」
「ん?何を?」
俺は彼女にこれでもか、というぐらい引っ張られて赤くなった両頬を押さえながら彼女の問いの意味を待つ。
「今の状況ですわ!!なぜ宿題を渡すのに部屋にまで入らなければならないのですか!!」
「ああ確かに。ポストにでも入れておけば済む話しだよね」
紗利菜ちゃん冴えてる~!と茶化す黄坂。
チッ、まだいたのかよ…。
彼女を見て懲りて帰ったのかと思ったのに…。
「…それじゃ宿題出さねーだろ」
「だからってそこまでしなくてもよいのではなくって!?」
いつの間にか起き上がった紅が腕を組んで俺を睨みながら怒鳴るように話す。
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