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… なんかこうも潔く拒まれると虚しくなるな…。
………ん?
「って!!ちょっと!!これやばいよ和白!!」
わずかだが違和感に戸惑ってると、黄坂が急に声を上げて冷や汗をかいて少し血の気が引いた顔で俺を心配そうに見つめる。
「この人…けがしてる…」
~*~
「やっぱりな」
「………」
「………」
片手、片腕等所々に湿布が貼られた先程の彼女と向かい合うよう座っていたのは、絹織紫小里。
そして、けが人は彼女の母親だった。
怪我を発生させてしまった俺達はあの後慌てふためき病院に連れて行こうと提案すると突然その女性は猛ダッシュで駈けだしたので慌てて俺達は彼女を追いかけた結果、絹織の住む団地にたどり着いてしまった、ということになった。
彼女は昔からか弱く、重いものを持つと骨折したりぎっくり腰になってしまうという。
それで周りに気を使わせる羽目になり、それが裏目となって怪我をしたら自力で治療する癖がついてしまった模様。
「お、驚かせてごめんなさいね…」
「いえいえ、俺の方こそすいませんでした…」
「も~しおりちゃんもお母さんいることくらい教えてくれたっていいのに~」
「………」
母親が来てから絹織の様子が大分変だ。
先程から俯いてスマホをずっといじってこちらを見向きもしない。
その目も冷たく、まるで嫌なヤツと同じグループになって不機嫌になってるヤツみたいな、そんな感じ。
「…絹織?」
「用は済んだであろう?さっさとお暇していただけないだろうか」
ギロっとこちらを睨みつけるように見る彼女。
あんな能天気にゲームしている彼女から想像できない、冷たい態度に俺達は一瞬固まってしまう。
「そ、そうですわね。お父様もお母様も心配なさっていることだろうし…」
「だ、だな!俺も帰ろっと!!」
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