世界の果てで、君に番外編・聖太郎サイド1

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ー・・・なんなんだ この検事さん。実は全てわかってるんじゃないの?!ってくらい自信に満ちた物言いでさ。・・・ただのおぼっちゃまだと思ってたけど、どうやらかなり仕事熱心の、こっちにしてみたらはた迷惑な人みたいだ。 結局、俺は留置場に入れられて10日間、検事先生の探求心を満たすために付き合わされることになった。・・・認めてるんだし、早く書類回してくれればいいのに。この程度の罪なら、案外それより早く家に帰れるかもしれないし。まぁ、この留置場、ってトコも割とシュールな所なんだけど。それはまぁ、省くとして、さ。 着替えも持ってないので留置場で借りる。・・・ま、汗くさいのだけなんとかなれば、ダサいとか言ってる場合じゃないからね。 その間も、検事先生の取り調べは続く。手錠かけられて、腰に縄つけられて護送されるって、やっぱ良い気分しないよね。人間扱いされてない、っていう感じで。 『伊丹君 誰を庇ってるかは知らないけど それは結局 誰のためにもならないんだ 真犯人は反省しない だからまた同じ事を繰り返す いわば君は彼・・・いや犯人が罪を重ねる手伝いをしていることになるとは思わないか?』 ・・・ヤベ、ド直球ストライクの正論攻撃。俺 自分が緩い性格だな、ってわかってるから、こういった信念持ってる人に弱いんだ、実は。 ・・・そういえば、親父からもあんま、説教されたことなんて、ない。・・・きっと、子供が嫌いな人だったんだと思う。だから、こっちからもそれ以上のいわゆる、熱い親子の触れ合い、ってなものは求めなかったというのもあるけど。 ・・・相楽 郁人、って言ったっけ。このお節介な検事センセは。 真面目で、一途で、一生懸命で。会話の端で柔道をやってる、とも。まさに文武両道、ってやつだね。 そういえばセンセ、『彼』って言ってた。真犯人を呼ぶときに。 ー・・もしかしたら結局、このセンセには敵わないかもしれない・・・、自分からはしゃべらないつもりだけど、なんだか、この先生にすべて暴いてほしい気も・・・する。 かくれんぼをしたときに、どこかで鬼に見つけて欲しい、と願う子供みたいにー・・・。 『伊丹 聖太郎君 君を起訴猶予で釈放します』
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