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時刻は5時に近い。サラリーマンならそろそろ終業の時間なんだろうけど、センセ、どうやらまたなにか、調査に出歩いてるみたい。・・・ホント、この人のお節介は筋金入りだ。
『どう?仕事は上手くいってる?』と、向こうからは当たり障りのない話題。ぼちぼちでんな、的な返しで終了かと思ったら。
『今度のことで 風評被害が出るんじゃないかなって心配してたんだ・・・君の仕事ってイメージが大事だから 一つ ダメになったところがあったらしいけどそれ以外で何も無いようなら良かったよ』
・・・驚いた。俺のこと、なんでも知ってるんだな。そりゃ調書、ってのを読んでるんだろうし、こっちの素行なんかは把握してるんだろうけど。・・・そんな心配までしてるんだこの人ー・・・。きっと、俺の他に関わった人に対しても。
『!マズ じゃ俺 これで・・・!』先を急ごうとセンセから別れの挨拶。俺も軽く会釈して後ろ姿を見てから反対へ歩き出した途端ー・・・
とさっ。なにかが崩れたような音。ー・・・振り向いてみるとセンセが道に倒れてた。
『センセ・・・大丈夫?』
応答はない。抱き起こしても無反応。おでこ触ってみたら『熱い・・・!』 どうやら熱があるみたい。
路地裏に近い通りで、あいにく誰も通りかからない。
救急車呼ぶか?・・・でもウチ、目の前だしな・・・。
いわゆるお姫様抱っこしながらアパート2階の俺のウチへ。センセ、俺より華奢だから大丈夫だよな、と思ったから。
鍵開けるとき、ちょっと脇に下ろして。・・・でも一向に目覚める気配無し。これは重症かも。
そのまま俺のベッドへ寝かせてやる。本当は竜也の使ってたベッドのほうが綺麗なんだけど、こっちなら作業しながら様子看られるだろうし。
とりあえず上着脱がせて、ネクタイ緩める。シャツの一番上のボタンも外す。 浅い呼吸してたけど、頭に冷却ジェルシート貼ったら楽になったみたい。・・・いざとなったら、いよいよ救急車だな、と思いつつ、一度付けた部屋の照明を暗くする。・・・少し休めば大丈夫かもしれない。
ノーパソ開いて、iポッド付けて、ルーティーンの曲聴きながら作業。片耳は開けておく。集中しちゃうと、センセの状態が変わったときにわからないし。
気づいたら割と没頭して作業してた。面倒だと後回しにしてたトコもクリアして。他人がいるってこの状況が、良い緊張状態を作ったのかも。
『・・・ん!』ベッドの方から小さい声が。しばらくして掛け布団が擦れる音。
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