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次の日、しかめっ面をしながら折紙と格闘していた彼が笑顔で玄関から飛び出してきた。
姉も一緒だ。
手には色とりどりに連なった折鶴を持っている。
入院している祖父の所へと行くのだろう。
折鶴はなんとか完成したようだ。
姉を急かしながら駆け出していくかに思われた少年はふと、立ち止まってこちらを見た。
そのまま走り寄ってくる。
そして、折鶴の束のうちから二連を祭壇へ置くと柏手を打った。
そしてまた姉の元へ走り去っていった。
彼が置いていった鶴はやっぱり不恰好で歪だった。
けれど、純粋な願いが込められているのが感じられた。
最近では参る人も少ない社だ。
参拝者がいたとしても捧物に込められた願いは不純なものが多い。
人は自分のことしか考えず、私という存在も忘れ去っている。
こんな処にいるのはもうやめてやろうかとも思っていた。
でも、たまにこういう人間がいる。
純粋な願いを持ち、私に祈ってくれる人間が。
ならば、もう少しここにいても良いかも知れないと思う。
兎にも角にもまずは少年の願いを叶えてやるとしよう。
【終】
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