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「もーやだ! こんなのやめてやる!」
少年が叫びながら手に持った幾枚の折り紙を放り投げた。
それらはひらひらと舞い、部屋が一瞬色鮮やかに瞬く。
少年はそのままふてくされたように机に突っ伏してしまった。
「そんなこと言わないの。おじいちゃんに早く元気になってもらうんでしょ」
床に散らばった折り紙を一枚ずつ丁寧に拾いながら優しく声をかけるのは彼の姉だろうか。
「でも、これぼくには向いてないよ。
見てよこれ、ほら」
突っ伏したままの少年が姉に差し出した折鶴は左右の翼の大きさはばらばら、折り目もよれてお世辞にも上手は言えなかった。
そんな鶴を見て姉は苦笑する。
「確かに向いているとは言えないね。
でもね、苦手なものの方が一所懸命になるでしょう。
一所懸命に作ったものの方が思いは籠りやすいものよ」
「どういうこと?」
「願いが叶いやすくなるってこと」
少年は納得できないのか、顔をしかめた。
しかし姉の顔と自分の折った鶴を交互に見やると、渋々ながら再び折紙に手を伸ばした。
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