向日葵のなくころ

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 腕時計を見ると、午後四時だった。  パソコンの電源を切り、大山海帆(おおやま みほ)は立ち上がった。デスクの上の個人カレンダーを『帰宅しました』という離席メッセージに変更して。 「あれ、海帆さん。今日早引けですか?」  隣席の後輩がめざとく見つける。海帆は頷いて、 「ええ、一ヶ月前から申請出してたわよ」 「お疲れ様ですー。もしかしてデートですか? 営業課のカレシさんと!」  手元をお留守にして、好奇心旺盛な後輩が訊いてくる。  デート。  カレシ。  そのふたつの単語が、海帆の心に暗いものを呼び寄せた。 「……違うわよ。でも、そんなとこかな」  これ以上ない曖昧さ。その答えにまた質問を重ねられることを厭って、海帆は「お疲れ様」を残してさっさとその場を後にした。
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