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自宅までの道すがら、スーパーに寄って食材を調達した。
肉や野菜、お菓子を購入し、更に併設されたハンバーガーショップでお持ち帰り注文をする。安いだけが売りのチープな店だ。店内は学生であふれ返っていて、海帆も社会人になってからは年に一度しか来店しない。
その『年に一度』の日が、今日だった。
大量の荷物を抱え、夏の殺人的な太陽光を存分に吸い込んだアスファルトの上を歩く。
夕刻にさしかかり炎天下は多少和らいだが、西日の強烈な光が地面に濃く長い影を落としていた。
排気ガス混じりのむぅっとした熱風が、身体中にまとわりつく。
街路樹に群がるセミが、生を主張するように鳴き歌い叫ぶ。
植え込みや常緑樹の葉の色も濃い。
夏一色の風景が眼前に広がっていた。
首筋に流れる汗をハンカチで拭きながら、海帆は今が一番暑い時期ーー盛夏だと思った。
気が遠くなるほど暑くてけれど短い夏の盛り、その中のたった一日が海帆にとって特別な日だった。
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