コトハ 12歳

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―――― ―― 結局、寒波はイズミ村に5日居座った後、去って行った。その猛威とは裏腹に、大きな事故も起きなかったのは僥倖でしかない。 屋敷の外に出ると、吹雪が不純物を運んでいったのか、蒼天がキラキラと眩しく見える。刺すように冷たい空気が、僕の腰上まで積もっている雪を撫でていった。 「積もりましたねぇ。」 「まずはアプローチから綺麗にしましょうか。」 ワラワラと屋敷から出て来た使用人たちの手には大きなシャベル。これから屋敷の屋根や外周の雪かきが始まるのである。 と言っても、姉さまが展開する闇属性の穴の中へ雪を放り込んでいくだけ。毎年の作業に慣れ切った使用人たちは要領良く進めているようだった。 「コトハは村の方を手伝ってきなさいよ。」と言うので、そうすることにする。春先の雪解け水は自然災害に繋がったりもするから、村に積もった雪は闇属性魔法で処分することになっていた。溶けるものがなければ災害も起こりようがないということだ。 風属性魔法で透明の翼を生やすと、空に舞い上がる。 眼下は白、白、白ばかり。家屋や木々は勿論、雪祭りのために設(しつら)えた氷像や飾りも雪に埋もれている。その中で、多くの村人が動いていた。 「…もう来ているのか。」 雪が止んだのを察知したのだろう、観光客の姿もある。 これは速やかに復旧する必要があるな、と僕は村の中心部へと羽をはばたかせた。
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