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熱波に踊る街並み、アスファルトの輻射熱、あまりにも暑苦しく今にも本気で炭化でもしそうな私に道行く他人がくれる物としたら冷ややかな視線だけだった。
夏などなくなってしまえばいい。
そう唱えても、何も変わる事などはなく、私はひたすら、大袈裟な登山ルックに身を包み、カッコつけたグレゴリーブルーの大きなリュックを背負って青山通りから一つ入った裏道を突き進む。
この街ではういてしまうのは当たり前か、どんなお洒落な山ガールだって。
だけど、私の通う大学の最寄りの駅が表参道なのだから仕方がない、私はこれから山梨県の王岳と言う場所を目指して地下鉄の階段を下りていった。
専攻は社会心理学科、その卒論を書くためにその山に行く。
王岳はちょっとした登山になると言うことで、しっかりした装備を揃えてくれた。
その王岳にひっそりとある施設、そこには真理亜という女性が住んでいるそうだ。
その女性に会ってレポートを書けば卒論は完成だと、教授は自信満々で言っていた。
至れり尽くせりで随分簡単な論文ですこと。
だけどあの教授のことだ絶対に一筋縄ではいくまい。
一抹の不安を胸に場違いな出で立ちで半蔵門線に乗り込んだ。
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