聖母のレクイエム

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「実は知人に貴女を訪ねてこいといわれ、此処まで来ました、知人とは大学の恩師なのですが…」 「私の元を訪ねてくる人達は皆、ある種類の悩みを持っています、とても大きな闇です、でも貴女はそれとは少し違って見えますね」 そんな深刻な悩みなどこれまで持ったこともない、あると言えばこの卒論だけ、私はただの大学生だ。 「真理亜さん、もし貴女がその姿の通り、悩める者達の拠り所、なのだとしたら、どうかその行いを、真理亜さん自身をレポートさせて下さい、そう恩師に命じられました」 「そうですか、構いませんわ、私は私を求める者を拒みません、歓迎いたしますわ、さあこちらへついてきて下さい」 真理亜さんは踵を返し、細い獣道を慣れた足取りで進んだ。 「足を取られないように気をつけて下さいね」 「あ、ありがとうございます」 優しさに満ちた導きに従い道なき道を行く、依然彼女は微笑みを絶やすことなく、でも私は少し不安があった。
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