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林道から続く私道の先に古びた洋館が見えてきた、ステンドグラスも十字架もない、プロテスタント教会なのだろうか。
小さなラブホテルのようにも見える。
「粗末な所です、ただ貴女の好きなように使って下さって結構です、ええと」
室内に入るとロビーのような物もあった。
「そう言えば、貴女のお名前をまだ聞いてませんでしたね」
そうだった、慌てて忘れていた。
「守谷 吉子(きっこ)と申します」
私は深々と頭を下げた。
「吉子さん、よろしくお願い致しますね」
二階に上がって左の部屋を使って良いと言われた。
掃除はなされていたものの古い黄ばんだ壁、天井のシミ、テレビは無いが、ベッドと布団、トイレにシャワー室それにエアコンが設置されていたワンルーム、やはりホテルの一室みたいだった。
しかしやっとこの重いリュックを下ろして、もっと楽な服に着替えられるのが嬉しい、私は安堵の息を吐いた。
真理亜さんは夕飯の支度ができたら呼びに行くと言っていた、会談をしましょうと、ありがたい申し出だったが、Tシャツにジーンズのこの格好、ラフ過ぎやしないだろうか。
せめてお手伝いでもと、一階の炊事場を探した。
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