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ここは世界征服を狙う悪の組織の秘密基地。
雷光をバックに浮かび上がっるその建造物のシルエットは禍々しく、どこか有機的であった。
その基地内に男性の絶叫が響き渡る。
その絶叫は、地下で怪人の研究中をしているマッド・サイエンティストを震え上がらせ、試験管の中から生まれたばかりの獣怪人が全身の毛を逆立て、今まさにいちごキャンディーを頬張ろうとしていた悪の頭領の手から、キャンディーの瓶を落として辺りにいちごの香りをぶちまけさせるようなものだった。
「あ~ん、もお!ミストレスちゃーん!何処なのアタシの可愛いミストレス~!」
野太い声で甲高く喋る彼の名はストレングス。
「力」と名付けられた彼は悪の科学者達が持てる技術の全てを結集して生み出した、名に恥じぬ圧倒的な破壊力を持つ怪人だった。
一方、名を絶叫にて連呼されているミストレスとは美しい金髪とハリウッド女優も裸足で逃げ出すような完璧なプロポーションを持ち。
人形のように、整って冷たい顔立ち。
しかしその美しさに心を奪われようものなら彼女に冷たく見下げられ、捨て駒にされてしまうだろう。
彼女は悪の組織の女幹部だった。
しかし今は「アクマヨシリゾキタマエ」と、片言の聖句をぶつぶつと呟きながら、将軍専用会議室、ソファの上で膝を抱えて縮こまっている。
そんな様子のミストレスの側に控えるのはラッドという生まれたての彼女の秘書官だけだった。
基地に響き渡る絶叫を聞いて女将軍の顔色が死人の色になってゆくのを見つめながら、ラッドは眉を寄せた。
「閣下……」
「なんでもない」
話をする前から遮る彼女の声は心なしか恐怖に怯えて震えているようだ。
ラッドはミストレスにお茶を差し出した。
「…気休めですが」
ぽつりと告げられた言葉に、まさしくその通りだと思いながらも、カップを受け取り、ミストレスはお茶を一口飲んだ。
胃がキリキリ痛むが胃薬はなく、かといって地下の実験室へ向かえば途中でストレングスに出くわす可能性が高い。
激痛に耐えて脂汗を浮かべるミストレスを見ながら、ラッドは自分もお茶を啜った。
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