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「ド~クタ~、せ~んせっ、マグラせーんーせーい~!ミストレス見なかったァ?執務室にィ、居ないんだけどォ!」
ノックも無しに地下実験室に飛びこんできた元作品の姿を目にして、ドクター・マグラは額を押さえた。
「…ミストレスなら先ほど会議室へ向かうのを見ましたよ」
優秀な彼女の心労を思うが、彼女をかばって自分が被害を受けたくなかったマグラは、ミストレスにとって死刑宣告にも似た言葉をさらりと吐き出した。
「ヤーハー!メルシィ、ドクター!ではアタクシ行って参りますわ!」
右腕を高々と掲げ、そんなことしなくてもいいのにわざわざ宣言すると彼は踵を翻した。
まるで千鳥足のような浮かれた足音が遠ざかるのを聞いて、ドクター・マグラは黙って実験を再開した。
「んふふ~ふふふんふん~」
何やら音程の外れた鼻歌を混じらせ、嬉々として将軍専用会議室へ向かう怪人が一人。
その足取りは軽く、スキップどころの騒ぎではない飛び跳ねようだ。
「待ってなさぁい、ミストレス!今日も今日とてキッチリ可愛がってやるぜコノヤロウ!」
欲望を垂れ流して、ついでにキラキラと輝く涎も垂れ流して、ストレングスは走った。
まるで親友が自分の身代わりに残虐な王に捕らえられているかのように、必死で走っているようでもあった。
会議室の前で見張り戦闘員を脅して聞き出した合言葉を唱えると、開いた扉に滑り込む。
「見ーつーけーたーわーよミストレス!」
背後から朗々と響き渡った声に、ミストレスは両目を見開いた。
そんな姿を視界に捉え、ストレングスは溢れる涎を拭うことなく、ニヤリと笑みを浮かべた。
見ようによっては、野性的で魅力的だ。
「ストレングス…」
諦めの混じった声でミストレスはそれだけ呟いた。
「なにかしら~、アタシの可愛いミストレスちゃん」
『アタシの』発言に、ラッドは口に含んでいた紅茶を勢い良く吹き出した。
そこでようやく気付いたように、ストレングスがラッドを振り返った。
そして、その頭の上に猫耳を見つけて嬉しそうに笑う。
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